賃貸マンションの管理会社に勤務しているのですが、退去立会を長年してきた中で気になったことやこれから引っ越しがあり退去立会で不安な人に参考になるように今回は退去費用について書いていこうと思います。
賃貸マンションに住んでいて引っ越しすることになり、
「退去時にどのくらい費用が掛かるのだろう?」
と不安になっている人も多いと思います。
賃貸マンションの退去費用は、まず部屋の広さと破損・汚損の程度に応じて費用は高くなります。
そこで今回は、
- 敷金なしやペット可物件
- タバコを吸った部屋
- 退去費用に火災保険は適用されるのか?
についてご紹介していきます。
敷金なし物件やペット可物件の退去費用相場について!
敷金なし物件の退去費用相場について!
まず敷金とは、賃貸マンションに入居する際、退去の時まで大家さんに対して預けるお金です。部屋を退去する時に原状回復工事や滞納等未払金が無ければ通常全額返金されます。
敷金なしの物件は、賃貸借契約時に敷金を預けていないので、退去の際には、費用は破損汚損等した金額を実費で支払う必要があります。
ですので、部屋を使っていた個人個人の使い方によるので相場というのは実際には出すのは難しく綺麗に使っていた人は退去費用は安く、逆に雑に使っていた人は高くなることは一般的に言えます。
敷金を預けていると、
例えば、賃貸借契約時に20万円の敷金を預けており、今回退去時に16万円の退去費用が掛かるとすると
20万円-16万円=4万円
4万円が必要な費用になります。
ということは、敷金なしだと20万円全額支払う必要があります。
ここで、敷金と礼金を混同されてる方がたまにいらっしゃいますが、
礼金は、
「マンションのオーナー様に対するお礼金」
なので退去時には返ってこないお金になります。
敷金なし物件の場合は、退去するときに掛かる費用は、契約書の特約に
- ホームクリーニング代 ○○円
- ホームクリーニング代 専有面積○○㎡×単価
- 畳表・襖紙の張り替え及びホームクリーニングの費用全額
を、負担することを承諾しました。
等記載がある場合が多いです。
退去費用を計算する上で知っておかなければならないのは、
原状回復費用
一般的に原状回復というと「入居した当時の状態に戻すこと」ですが、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
漢字ばかりでよく分からないと思う方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明すると
「借主は退去時は入居した時の状態に戻す必要はなく、わざとだったり不注意で部屋を傷つけたりした部分は原状回復の必要はありますが、それ以外の経年劣化や通常損耗が原因のものは借主は負担する必要がない。」
ということです。
経年劣化とは
字の通り時間が経つにつれて自然に劣化する状態。
- 日焼けによるクロスやフローリングの変色
- 熱による網入りガラスの亀裂
- ドアノブや網戸のコマの不具合
- 壁に貼ったポスターやカレンダーの跡(日焼け)
通常損耗とは
普通に生活していても出来る凹みや汚れなど。
- 家具の設置による床・カーペット・畳の凹み
- 壁に接して置いているテレビ・冷蔵庫等電化製品の後面壁の黒ずみ(電気やけ)
- 下地のボードに影響のない画鋲やピンの跡
- エアコン設置に必要な壁のビス穴
このガイドラインには借主・貸主の退去費用にかかる責任がどちらにあるのかの一般的な基準が定められているので退去時に管理会社やオーナーから請求された費用の根拠を調べるのに参考になります。
負担割合
ガイドラインを見てみると、クロスの場合、経過年数は6年で残存価値1円となるような負担割合で計算します。
経過年数とは、物の価値は年月と共に下がっていくという考え方です。
例えば、3年住んで引っ越しすることになりました。
部屋のクロスにキズがあり貼替に8万円必要だとすると、ガイドラインを見てみるとクロスの経過年数は6年なので、入居していた期間が3年だとクロスの価値は半分の50%になりますので支払う必要のある費用も50%の4万円になります。
では、クロスの費用負担が必要な場合、クロスの耐用年数が6年なので6年以上住むと補修費用は全く掛からないのでしょうか?
まず賃貸で借りているマンションのお部屋はこのマンションのオーナー様から借りて家賃を支払っています。
民法には他人のものを借りた場合、善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)という義務が定められたおり、賃借人は、社会一般で通用している常識で要求される程度の注意を払って部屋を使用する義務があります。
結論として、賃借人が善管注意義務を怠ったために部屋の補修が必要になった場合、入居期間が耐用年数を超えたとしても継続して使用可能な設備は、その補修にかかる費用の一部を賃借人も負担する可能性があります
クロスだと6年以上住んだから補修費用は0ではないのです。
私の勤務先はそういう場合、6年以上となると費用の10%をご入居者様にご負担頂いております。
※ただし、入居中の偶然かつ突発的な事故で生じたキズの場合は最後にご説明しております火災保険で修理出来る可能性もあります。(要保険会社確認)
各管理会社ごとに賃貸人・賃借人双方の経過年数に応じての負担割合の詳細はガイドラインに準じて決めているので、退去立会に来たスタッフに聞いたり管理会社に聞くと答えてもらえます。
ペット可物件の退去費用相場について!
ペット可物件では、飼っていたペットがどのくらい部屋を破損・汚損させたかによって費用は変わります。
自分自身だけでなくペットの破損・汚損分も退去費用に入るため、費用は高額になる時が多いです。
しかし、ペット可の物件の多くは賃貸借契約時に敷金を通常より多く預けていることが多く、実際は敷金と退去費用の差額の実費が必要になるので、費用としては高額にならないことが多いです。
退去費用の相場は、ペットのしつけをしているかしていないか入居者本人がどのように部屋を使用したかによりますので、ペットのしつけも出来、入居者本人も綺麗に部屋を使用していれば、退去費用も安くなります。逆にペットのしつけが出来ていなく、入居者本人が雑に部屋を使っていると退去費用も高くなると一般的には考えられます。
一番やっかいなのは、入居後、ペットを飼うことになり管理会社やオーナーに届けていないと敷金は通常より多く支払っていない契約ですので費用は高額になる可能性があります。
さらには規約違反として違約金を別途取られる可能性もあります。いくら退去時に綺麗に掃除や消臭剤を撒いていてもペットがつけたキズや臭いは取れないものです。
しつけが出来ていないペットは、柱や壁、扉を噛んだり傷つけたり床におしっこやウンコをしたりします。
猫は爪研ぎをするのでオーナー様も部屋が傷むのを嫌がりペットは犬のみとされたり犬と猫で賃料や敷金に差をつけて募集される場合も多いです。
よくある補修箇所は、
- フローリング、クッションフロア、畳
- クロス
- 柱、扉、障子や襖(ふすま)
の爪痕、噛み跡が多いです。
※ただし、敷金なし物件同様、ペットが入居中に偶然かつ突発的な事故でつけたキズの場合も最後にご説明しております火災保険で修理出来る可能性もあります。(要保険会社確認)
退去費用を抑える為には、自分自身の行動は心がけ次第で部屋を綺麗に保つことはできますが、ペットの場合は、キチンとしつけをし部屋を破損・汚損しないように日頃から意識して生活することが大切です。
タバコを吸った部屋の退去費用相場について
2020年4月1日より改正健康増進法が施行され、タバコを吸う場所も限られ部屋では自由にタバコを吸いたいなと思ってる方も多いかと思います。
タバコによる部屋の臭いやヤニ汚れは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にも借主の負担になると書かれています。
臭いやヤニ汚れはタバコを吸っていた部屋のクロスや設備関係(エアコン、インターホン受話器、カーテンレール等)の補修費用が必要になります。
私の経験上、タバコをベランダで吸っていた人以外タバコを部屋で吸う人は、ほぼ全室で同様の状態が確認されることが多いですが、唯一トイレだけでタバコを吸っていた人がいましてその人にはトイレのみ補修費用が発生した特異な例もあります。
退去費用の相場というとタバコを吸う人がどの程度、どの場所で吸ってるかによって費用も変わってきますので、費用は、退去時に確認した部屋の状態で判断されることが多いです。
退去費用の具体例
- クロス貼替(壁・天井)
- エアコン洗浄
- 換気扇洗浄
- 各設備(インターホン受話器、カーテンレールなど)のヤニ汚れ落とし(特別清掃)
部屋でタバコを吸うことによって退去時に費用の発生を防ぐためには、室内では喫煙を控えベランダのみで吸う等部屋内がヤニで汚れたり臭いがつかないようにする必要があります。
退去費用(原状回復工事)に火災保険は適用されるのか?
退去の手続きの中で火災保険の解約もすると思うのですが、掛け捨てになっている人がほとんどだと思います。
親切な管理会社だと退去の手続きの時に火災保険の解約の説明をしてくれるところもありますが、火災保険は入居時に管理会社指定の火災保険に義務で契約していることがほとんどにもかかわらず、退去時の解約の手続きの説明はほとんどない状態だと思います。
解約をきちんとしていると退去日に保険期間の残日数が1ヶ月以上残っている場合は、返戻金も出ますので掛け捨てにもなりません。
火災保険はなぜ掛け捨てになりがちなのかというと
「火災保険は火事を起こした時に補償される」
というイメージがあるからなのだと思います。
賃貸マンションの火災保険の補償は、
①自分の家財に対する補償⇒部屋に置いている衣類・電化製品・家具に対する補償⇒家財保険
②大家さんに対する補償⇒部屋の中にある家財以外のオーナー様の持ち物に対する補償⇒借家人賠償責任補償
③第3者に対する補償⇒部屋からの火災や水漏れにより階上・階下・隣室のお部屋に損害を与えた場合の補償⇒個人賠償責任補償
に分かれます。
ここで、退去時の原状回復工事が必要な補修費で使える可能性のある補償は②です。
賃貸マンションの火災保険には通常、「借家人賠償責任補償」がセットでついています。
火災保険の特約という形でセットになっている場合がほとんどなので単独で契約することは出来ません。
「借家人賠償責任保険」とは、入居期間中に偶然かつ突発的な事故を起こして借りている部屋に損害を与えた場合にその修理費用が補償される保険です。
例えば、
①引っ越しの荷物の移動の際、不注意で壁にキズや凹みをつけてしまった場合。
②洗面所で電動シェーバーで髭を剃っていた時に不注意でシェーバーを落とし洗面ボールにヒビが入ってしまった場合。
③洗濯機の排水ホースが不注意で抜けてしまい床が水浸しになり床材の交換が必要になった場合。
④部屋のフローリングに不注意で物を落としてしまいフローリングにキズがついてしまった場合。
⑤部屋の玄関扉の鍵を回した時に鍵が折れてしまって折れた先端がシリンダーの中に残ってしまい鍵を開け閉め出来なくなった場合。
⑥タバコの火の不始末でボヤが起きてクロスや床が焦げてしまった場合。
など
契約している保険会社によって補償内容も違う場合もありますので、各保険会社に確認は必要です。
①以外は時期が分からない場合もあると思いますが、おおよその時期の連絡は必要です。
1番ベストなのは、事故が起こった場合、すぐに管理会社に連絡をし事故状況を見てもらい火災保険を使いたい旨を伝えると対応してくれます。
まとめ
退去費用の相場は、実際、その住んでいたお部屋をどう使用したかで決まります。
敷金なし物件だと退去の精算時に原状回復の工事代が全額実費負担になりますし、ペット可の物件だと住んでいる入居者の住み方はもちろん同居するペットのしつけもきちんとしていないと原状回復の工事代が高額になる可能性もあります。
タバコのヤニや臭いは普通のルームクリーニングでは取れないので喫煙の量・場所に応じて原状回復工事費はアップする可能性があります。
喫煙者にとっては住みづらい世の中になってきましたが、部屋に帰ってもベランダ等で吸われる方が退去時の精算のことを考えると安心です。
あとは、火災保険には必ず加入・更新もし保険が適用される部分は保険の申請もしてもらえたらなと思います。
少しでもお役に立てれば幸いです。
今回も最後までお読み頂き有難うございました。
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